看護やリハビリ、医療・介護の現場では、
・自分の死を予感する
・苦痛から抜けられない
・今までできなかったことができなくなる
などネガティブな体験や感情を得る場面が多くあります。
リハビリにおいてもポイントとなるのが「障害受容」の知識です。
今までと同じようにリハビリを提供していたとしても、
患者さんの意欲が出ない・・・
効果が出にくくなってきた・・・
または、
少しずつ回復していたとしても、
本人に自覚がなくメンタルが落ち込みやすい・・・
できないことばかりに目が行ってしまう・・・
そんなことがあると思います。
「受容」と聞くと、
ターミナル期における「受容」とよく似ていますが、
ターミナル期だけでなく、リハビリの回復過程においても
受容のプロセスは大きく影響してくるのです。
障害受容の定義
上田は
「あきらめでも居直りでもなく、障害に対する価値観(感)の転換であり、障害を持つことが自己の全体としての人間的価値を低下させるものではないことの認識と体得を通じて、恥の意識や劣等感を克服し、積極的な生活態度に転ずること」で「障害を個性の一部として認める」こと、
梶原は
「障害を持ちながら、障害にこだわることなく、社会の中で普通の人間として充実感を持っていきていること」、
本田は
「障害を踏まえた上での社会適応」、
南雲は
「障害のために変化した諸条件を受け入れること」
としています。
(参考:「障害受容(克服) -脳卒中患者のこころのうち-」Jpn J Rehabil Med 2013 ; 50 : 951.956 岡本五十雄)
障害受容のプロセス
コーンの分類
①ショック
発症・受傷直後であり、現実に起きていることが理解できていない。
「自分自身とは関係がない」というような衝撃を感じている。
②回復への期待
自分自身に起きていることを否認し、すぐに治るだろうと思い込もうとする段階。
③悲哀(非嘆)
徐々に現在の状態や状況を現実的に理解しはじめ、希望を失い、無気力で回復意欲を失っている段階。
④防衛
前向きに「これまでと何も変わらない」と思いながら、防衛機制をはたらかせ、それまでに行っていたことに執着する段階。
⑤適応
障害を受け入れ、障害は自分の個性のひとつであり、悪いものではないと受容する段階。
フィンクの段階理論
日本ではこの危機モデルが最も有名なモデルとされています。
①衝撃(ショック)
強い不安から混乱状態になり、無気力状態に陥る段階。
②防御的退行
自分自身の状況を否認したり、反対に願望のような回復に対する期待を持つ段階。
③承認
色々な葛藤がありながらも、少しずつ自分自身の状況を理解していく段階。
④適応と変化
新しい価値観を見出し、現在の自分自身を受け入れる段階。
ターミナルケアにおける受容「死の受容プロセス」
アメリカの精神科医であるエリザベス・キューブラー=ロスが
1969年に、死に直面する人々の心理状態を表す5つのプロセス(著作:「死ぬ瞬間」より)を提唱し、
これは現在でも参考になる死の受容プロセスとして活用されています。
このプロセスにおいては、
「否認」「怒り」「取り引き」「抑うつ」「受容」
という5つの感情的段階を経て進行します。
①否認
「何かの間違いだ」、「自分が死ぬなんてありえない」など、自己防衛の心理が働き、現実を受け入れられず、拒否し否定する。
②怒り
死の運命に対して否認と是認が頭の中を駆け巡り、「怒り」、「憤り」、「羨望」、「恨み」などの感情が現れる。あらゆることに対して怒りが向けられる。
③取り引き
怒りを向けてもどうにもならないことに気づき、「○○だから死ねない」、「○○するから助けて欲しい」「○○したいからもう少し長く生きたい」など、自分の中の神と取り引きを行い、死への回避の可能性を探します。
④抑うつ
死を避けられないことが分かると、必ず死ぬという事実を認める。死ぬことに対する不安・恐怖、残される家族への不安、経済的重圧など、さまざまなことが頭の中を駆け巡り、大きな喪失感に苛まれます。
⑤受容
死という事実を完全に認め、来たるべき自分の終焉を静かに見つめることのできる受容の段階に入ります。
これらは不可逆的に進むわけではなく、混在しながら時に前の段階に戻りながら進んでいきます。
死を覚悟するのは辛いことであり、頻繁な感情の浮き沈みを伴います。
しかし、死を覚悟することは、新たな理解に達し、成長することでもあります。
過去の痛みを忘れ、関係を修復することにより、死にゆく人と家族は心の平安を得ることができます。
リハビリテーションにおける障害受容
リハビリテーションにおいて「障害受容」という言葉が使われる際、
主にリハビリテーションに対する意欲を考えることが多いです。
例えば、
・自立に向けての意欲の低下・介護依存傾向
・感情失禁・スタッフなどに対する攻撃的態度
・閉じこもり傾向、外に出ようとしない・カーテンを閉めてベッドに寝ていることが多い
・退院が近くなると、肩こりや頭痛などの身体的不調を訴える
などです。
単純に身体機能の回復に向けて訓練をしていても、
そこに患者様の心が追い付いていないことがあります。
今どの段階にこの患者様はいるのか、
そこを考えるだけでかける言葉も違ってきます。
また、理学療法・作業療法における障害受容が、
ターミナル期の死の受容と決定的に違うのは
何より「回復に向かっている」ことです。
脊髄損傷など根治しにくい疾患であっても、代替手段を使っても、
その障害と共に、今より動きやすく過ごしやすい状態へと導くことができます。
よりよい生活にむけてリハビリテーションを行うために、
障害受容の段階を理解し、
患者様の心の動きに合わせてアプローチが選択できるといいですね。
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