栄養と運動、これらはどちらも大事であることは言うまでもありません。
良く寝てよく食べてよく動く
これはすべての人の健康にとって重要な要素です。
心不全患者さんももちろん同様で、やはりどちらも欠かせないのです。
このような前提のもとに、あえてどちらが大事なのか検討している文献がありますので私の私見を元にご紹介していきたいと思います。
栄養が大事
まず、栄養の定義から。
非常に多様なものを含んでいるのがわかります。
栄養がないと運動しても効果がない
よく言われることです。
これは、タンパクの異化と同化について考えるとわかることです。
運動時のエネルギー源はグルコースですが、
運動を続けると血中グルコース濃度が低下し、
体タンパク質を分解してエネルギーを生成します。
つまり、食事がとれていない状態で運動を続けると
より体タンパク質の分解(=異化)が亢進するため、
時にタンパク質の異化と同化のバランスが崩れてしまうことになります。
そう考えると、
まずは栄養が優先で、栄養がとれてから運動だ、
という主張も納得できませんか?
リハ栄養というと、
やたらとタンパク質にフォーカスが当たりますが、
当然栄養とはタンパク質ではありません。
例えば、インスリン。
糖質摂取後にインスリンが分泌されますが、
インスリンにはタンパク質の合成を促進し分解を抑制する効果があるとされています。
そう考えるとタンパク質だけの摂取ばかりではなく、
糖質と同時に摂取することも重要であると考えることができますね。
また、これもよく言われますが、
運動後どのタイミングでタンパク質を採れば良いのか悩むことがありませんか?
当院ではリハ栄養介入をしている患者さんは
リハ直後に補助栄養食品を摂取しています(リハタイムゼリー)。
この文献からもわかるように、
運動直後の方がよりタンパク質合成に効果的とされています。
理由としては、
筋の血流が増加している、
成長ホルモンの関与、
インスリン感受性の亢進
などが挙げられています。
この視点でいくと、
先に運動してから栄養を採った方が良い、
という意見にも理解ができます。
さぁ、ややこしくなってきましたね。笑
運動が大事
まず、運動というのはとても幅が広いですよね。
寝て足を動かすのも運動
マラソンを完走するのも運動
ここではまず、
特にリハビリテーションレベルでの運動について少し分けて考えましょう。
我々リハビリテーション関連職種はこれらすべてを意識しての運動の提供が基本です。
しかし、今回の心不全患者さんの運動という視点で、
特に栄養との関連として考えるのであれば
重要になってくるのは色をつけている臓器骨格筋レベルです。
おそらく、こういう視点はあまりメジャーではないでしょう。
運動をするというとすぐに
筋力をつける、持久力をつけるという、
目に見えて測れる指標ばかりに目がいくのが理学療法士の性だと思います。
しかし、そうなると負荷量がそれなりに求められますよね?
筋力強化や筋肥大を求めるのであれば最大筋力の何%で何回、とか。
でも、特に急性期ではそこが問題ではありません。
具合が悪くなって入院して、
次の日からリハビリが始まり、いきなり筋力Upを目指すって、
ちょっと理解に苦しみます。
そうじゃなくて、
まずはそういう運動をできるコンディションにするための準備としての運動
が必要なんです。
そして、
運動自体が筋タンパクの合成のスイッチになるともされており、
運動すること自体が栄養的にプラスの効果を発揮することも事実です。
とにかく、
心不全患者さんに限らずですが理学療法時に
すぐに廃用予防という立ち位置に立ってはいけないと考えています。
そうなると、維持という考え方が強くなり、
多くのケースではただ起こす、ただ歩くだけ
になっているように思います。
それは運動に対する見方が足りていないからなんです、
急性期こそ運動ができない条件下なので
いかに効果的な運動を提供するかはとても重要なことです。
終わりに
もちろん答えのない議論です、どちらも大事なことに異論はないと思います。
こちらの研究結果にもあるように、
運動単独より栄養を併用した方がより効果があることが示されており、
栄養単独での効果(ここでの効果は筋力)は示されていません。
当然ですが、筋力をアウトカムにした場合に栄養だけでは筋力強化は難しいでしょう。
やはり、両方が大事なのですが、
ここではあえて運動の大事さを強調して終わりたいと思います。
栄養はきちんとアセスメントして
適切な量の栄養を投与することで補うことができます。
しかし、運動は誰かが運動をさせないと賄うことはできないのです。
そこに我々理学療法士の存在価値が見出せることを期待しています。
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