循環器疾患を有する患者の多くが生活習慣病を保有していることは
臨床上理解できることだと思います。
心臓リハビリテーションにおいても、
生活習慣病をいかに維持改善するかが重要な課題です。
生活習慣病の中でも合併症が多く生命予後との関連も強いのは糖尿病です。
事実、外来心臓リハビリテーションを実施していると
糖尿病合併率が高いことを痛感します。
糖尿病でも運動療法が必要であることは、
患者さんは主治医から耳に胼胝ができるほど言われていますが、
実際に運動ができている患者さんは一部であると思われます。
糖尿病の3大合併症はご存知でしょうか?
- 糖尿病性神経障害
- 糖尿病性網膜症
- 糖尿病性腎症
特に腎症は長期的に透析導入のリスクがあるため
いかに末期腎不全の状態にならないようにするかというのは
患者さんのQOL向上のために不可欠です。
では、外来心臓リハビリテーションが慢性腎臓病(以下CKD)に対して
どの程度の効果があるのかを検討した論文を元にその効果を見ていきましょう。
外来心臓リハビリテーションの重要性|リハ職が押さえておきたい知識とは? – エポックセミナー
外来リハで覚えておきたい糖尿病透析予防指導管理料とは?
長い名前で覚えにくいのですが、
糖尿病透析予防指導管理料という診療報酬があります。
月に1回、350点の請求が可能です。
医師、看護師、管理栄養士が予防指導を行うことで算定できます。
それだけ国としても糖尿病性腎症からの透析導入を抑制したい
という考えがあるのです。
こちらのスライドの通り、
昔は透析導入の理由は慢性糸球体腎炎などの主に腎疾患でした。
しかし、今は糖尿病性腎症からの透析導入が1番多いのです。
2017年のデータでは、新規透析導入患者が40959人、
そのうち糖尿病性腎症からは16492人と全体の42.5%を占めています。
これは、放っておくわけにはいきませんよね。
そういうわけで2012年より糖尿病透析予防指導管理料というのができたのですが、
点数が少ないためなかなか普及に苦しんでいるような印象も受けます。
そこで、外来心リハでの指導ではなかなか達成できない
運動習慣の獲得に期待が寄せられます。
とはいえ、心臓リハビリテーションは心疾患が対象なので、
糖尿病を合併症で保有している心疾患患者さん限定となりますが、
そこが今後の課題となりそうです。
糖尿病性腎症に対する外来心臓リハビリの抑制効果について考える
今回、参考にする論文はこちらです。
「山口宏美他:糖尿病性腎症患者の外来心臓リハビリの効果 - 糖尿病透析予防指導管理との関連から.心臓リハビリテーション, 24(3/4) : 236-242, 2018.」
この論文では追跡期間は2年間。
糖尿病性腎症患者を外来心リハ参加有と無しの二群に分けて比較検討しています。
外来心リハの平均参加回数は月に3回程度のようなので、
頻度はそれほど多くはないようです。
心臓リハビリテーションのメニューとしては
有酸素運動20分、自重負荷を利用したレジスタンストレーニング20分と、
ガイドラインに準拠した標準的なプログラムです。
腎機能の指標として推定糸球体濾過率(eGFR)の変化率を算出し、
年にどれくらい変化したかを⊿eGFRとしてアウトカム指標としています。
結果はこちらです。
心リハ参加無し群の方が低下率は大きいようですが有意差は認めませんでした。
では、今度はCKDのステージ別に比較してみるとこのような結果となりました。
このように、3期以降の群で有意差がつきました。
つまり、CKDが進行している患者ほど
外来心リハによるeGFR低下抑制効果が期待されるという結果です。
その原因までは明らかにされていませんが、
心臓リハビリテーション自体も重症患者ほど高い効果が得られることが多い
とされています。
心臓リハビリテーション=運動療法 ではないので、
運動は平均週1回のみであったことを考えると、
心臓リハビリテーション中の医療職とのコミュニケーションなど
様々な要因が影響していた可能性もあります。
このようにCKDに対する運動療法の効果が知られているからこそ
運動療法は重要だとわかってはいるけど制度的に普及が難しいのでしょうね
糖尿病合併症がアメリカでは減少傾向にあるという事実をご存じですか?
食事制限やカロリー大摂取国、アメリカでは、実は糖尿病の合併症(腎症、網膜症、神経障害)は減少傾向にあります。
しかしながら日本は
- 糖尿病網膜症による失明が年間に3000人以上
- 糖尿病腎症による人工透析患者は年間に1万6000人以上
- 糖尿病足病変による下肢切断患者が年間に3000人以上
となっています。
これらの合併症が毎年新たに、発症し続けているわけで、
アメリカと異なり日本では減少の兆しがありません。
それはなぜか?
アメリカと違い、日本における糖尿病治療食はこの22年間変わっておらず、
糖質摂取比率60%のカロリー制限食であり、
合併症の予防にまったく効果がないどころか、
むしろ悪化させていた疑いさえあります。
そして現在でも日本では、糖尿病患者の合併症は減っていないのです。
一方、アメリカでは、ほぼ同じ20年間で、糖尿病の合併症は激減しています。
- 急性心筋梗塞は67.8%の減少
- 高血糖による死亡は64.4%の減少
- 脳卒中は52.7%の減少
- 下肢切断は51.4%の減少
- 末期腎不全は28.3%の減少
となっており、糖尿病による合併症が大幅に減っていることがわかります
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン 2014年4月17日より
このようにアメリカでは糖質摂取比率を40%あるいはそれ以下に減らすように指導されます。
まだまだ日本の糖質制限は改良の余地があるようですね。
外来での心臓リハを担当するセラピストが気を付けなければいけないことは
私はいつも患者さんにも言っているのですが、
重症な方こそ外来心臓リハビリテーションに参加する価値があるということが、
糖尿病性腎症という視点からも確認することができたことは有意義であると考えます。
外来に通院すること、それは運動だけが目的ではありません。
定期的な外来通院による生活習慣の改善もさることながら
運動以外の多面的な要因が結果に影響しているということを
我々セラピストもよく理解しておく必要があります。
そういう意味では、訪問リハや通所リハなども同様のことが言えると考えています。
何も病院でなければいけない、ということはありません。
心臓リハビリテーション、という意味では
心大血管リハビリテーション料の算定は病院でなければできません。
しかし、今回の結果のように、
医療者に気軽に相談できることやいつも指摘を受けられることが
プラスの結果になっているかもしれません。
そう考えるとあなたの存在価値に気づけるかもしれません。
まとめ
今回は糖尿病性腎症という切り口で心臓リハビリテーションの効果を見てみました。
腎不全患者さんにとって、透析導入を避けるということは極めて重要課題です。
誰も透析を受けたいとは思っていません。
医療経済的視点も含めて、
日本に1000万人いるとされている糖尿病患者さんに我々に何ができるのか、
常に考えて臨床に挑みましょう。
それでは、本日の記事は以上となります。
もし今日の記事に興味があると感じてくださるのであれば
こちらのセミナーをご紹介します。
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