皆さんは『筋力』をどのような視点で捉えて評価し、
筋力増強運動をどのような方法で行っていますか?
MMT(徒手筋力検査法)やHHD(ハンドヘルド・ダイナモメーター)で測定された値を
筋の張力(筋自体が収縮して起こる力・・・正確には活動張力)
だと考えていますか?
私は臨床上のほとんどの場合、真の筋力は測定できていないと考えています。
それはなぜか・・・
最終的に発揮された筋力とは筋自体の力(全張力=活動張力+静止張力)ではなく、
そこからその力が様々な抵抗により邪魔され、
引き算で出された結果であると考えるからです。
つまり、筋力=筋張力ではなく、
筋力=最終的に関節を動かす能力(モーメント)であるとも言えますよね!!
主動筋と拮抗筋の関係は『タイヤ引き理論』がポイント!?
皆さんは体力テストで100m走の時間を測定したことがあります・・・よね?
現在の世界記録は皆さんご存知のウサイン・ボルト選手の9.58秒、
日本記録はサニブラウン選手の9.97秒ですね。
※(Wikipediaより)
ではタイヤ引きをしたことはありますか?
ここでは『筋出力低下』について、
向かい風の中でタイヤ引きをしながらの100m走で例えながら解釈していきます。
あ、ちなみに筆者はサッカーしかしたことがありません。
100m走の本人の最速記録が9.58秒だとして、
これを筋力に置き換えると筋自体の力である『主動筋+協同筋』となります。
もちろんタイヤ引きをしながら走ると遅くなり、
これを拮抗筋が邪魔をしている状態と捉えると、
拮抗筋の筋緊張の高さが本来の『主動筋+協同筋』に抵抗をかけてしまいます。
式にすると・・・
『主動筋+協同筋-拮抗筋』で、筋が発揮しようとする力ということになります。
ちなみにこんな研究もあります↓
トレンデレンブルグ徴候が陽性の場合も陰性の場合も、
股関節外転筋力に差はなかったが、
股関節内転筋力はトレンデレンブルグ徴候が陽性の場合に有意に大きかった
という研究結果です。
つまり、トレンデレンブルグ徴候には股関節外転筋力はたしかに重要ですが、
股関節内転筋が邪魔をすることで、
股関節外転筋の役割である骨盤の下制の制御が不十分になると考えられますね。
※(薩摩ら:人工股関節置換術後における股関節外転筋・内転筋力とトレンデレンブルグ徴候との関係.リハビリテーション医学36:234-236,1999)
つまり、タイムを伸ばすためには、
本人の走力を上げる(主動筋や協同筋の筋機能を上げる)
or
引いているタイヤを減らす(拮抗筋による抵抗を減らす)
ことが評価・介入視点となります。
あ、もちろん原因は重複していますよね。
筋出力の抑制と向かい風の共通点とは?
さて、100m走の際に『追い風参考』と聞いたことはありませんか?
屋外競技では風の影響も考えなければいけません。
強い向かい風の中ではいいタイムは出せません。
向かい風に抗しながら走ると、タイヤ引きをしているのに加えてさらに遅くなりますよね。
この向かい風を筋以外の様々な因子に置き換えると、図のようになります。
例えば、
神経―筋の機能的な連結、
皮膚と筋の滑走性、
筋のアライメント、
姿勢、
体幹の柔軟性、
注意、
関節包内の摩擦など・・・
他にもたくさん考えられます。
いくら主動筋+協同筋を鍛えて拮抗筋の抵抗を減らしたところで、
これらの因子が邪魔をしていては、世界新記録は生まれないというわけです。
これらの筋張力以外への介入では即座に効果を得られることが多く、
評価と介入を同時に行いやすいことも特徴です。
筋力低下はなにも筋自体の問題だけではありません。
神経-筋の繋がりや筋の発揮を阻害する(促進する)組織によって
最終的に発揮できたものを広義の筋力と言っている場合もあります。
臨床上測定しているいわゆる『筋力』は、
本来の筋の張力が様々な因子に邪魔をされながら、
結果として発揮された値であると理解すると、評価・介入の幅が拡がりますね。
11/13(金)の中山先生のセミナー『筋出力の再考①~筋出力の考え方と構造的因子~』では、
教科書的なものではなく、運動学・解剖学・生理学に基づいた、
多角的かつ、より臨床に即した視点から『筋出力』を再考します。
お誘いあわせの上、ぜひご参加下さい。
本セミナーはこんなセラピストにオススメ
・『筋力』について違った視点から考えてみたい!!
・カルテやレジュメに安易に『筋力低下』と記載してしまう・・・
・どの対象者にも画一的な筋力増強運動を行ってしまっている・・・
・いつも行っている筋力増強運動ではあまり効果が出せていない・・・
・対象者の筋力を即座に変化させてみたい!!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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