2018年の世界理学療法の日のキャンペーンメッセージは、“Physical Therapy and Mental Health”(理学療法とメンタルヘルス)だったのをご存知でしょうか?
- 「メンタルヘルス」って何だろう?
- 現代社会が抱える病「うつ」
- 「心の病」の増加には、組織の変化が影響している
- 心の病気も予防に重点を置く時代
- メンタルヘルス対策には3段階の予防策がある
- 【最後に】理学療法士・作業療法士こそメンタルヘルスについて再考を
そもそも「メンタルヘルス」という言葉をご存知ですか?
社会情勢の急激な変化とともに、労働環境も刻々と変化しています。
現代では、以前では考えられなかったような多様かつたくさんのストレスが私たちの心にはかかっています。
そこで今こそ「メンタルヘルスの重要性」を改めて考え直してみましょう。
「メンタルヘルス」って何だろう?
「メンタルヘルス」と聞くと、心の病気とか不調などネガティブな意味で捉えられがちではありますが、実はそうではありません。
メンタルは日本語にすると「精神的な」、ヘルスは「健康」となります。
直訳すればメンタルヘルスとは「心の健康」という意味になります。
つまり・・・
『「心が健康である」とは、前向きな気持ちを安定的に保ち、意欲的な姿勢で環境(職場)に適応することができ、イキイキとした生活を送れる状態』
であることを言います。
特別な精神疾患にかかっているかどうかは判断基準とはなりません。
たとえ特定の診断が下りていなくても、心に不安やストレスを抱えている人はいますよね。
身体がある程度、健常な方でも心の変調がある以上、疾患を抱えた方は、より心に不調を感じやすくなるということは想像に難くないです。
また・・・
変形性関節症を患う人の20%、脳卒中患者の33%が不安・抑うつを抱えている
とも言われています。
現代社会が抱える病「うつ」
4人に1人が、生涯のうちに何らかのメンタルヘルスの不調を経験します。
6人に1人が、過去7日のうちに一般的なメンタルヘルスの問題を抱えていた可能性があります。
(世界理学療法士連盟作成ポスターより引用)
上記の数字に驚いた人も多いでしょう。
最近では、企業側もメンタルヘルスに対して対策に乗り出してはいますが、まだまだ充分と言えるものではありません。
メンタルヘルスの問題が、企業パフォーマンスに負の影響を与えると約 9割の事業所が認識しているとの報告があるにもかかわらず、メンタルヘルスによる休職・退職者がいる事業所の 3分の1が対策に取り組んでいないとも言われています。
ちなみに厚生労働省の「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」はストレス検査の義務付けを提言しています。
このストレス検査、多くの方が受けた経験あると思います。
しかしながら、その中でも「医療・介護職種のメンタルヘルスケア」も最近では問題となっています。
心身の健康に影響を及ぼす原因としては、主に労働時間が問題視されていますが、セラピストを含む医療職種においては、労働時間以外にもさまざまなストレス要因が生じている可能性が考えられるからです。
「心の病」の増加には、組織の変化が影響している
近年では、職場を取り巻く環境が大きく変化し、複雑な人間関係や長時間労働などのストレスによって、精神的に不調をきたす人が増えてきています。
『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケートでは、
「個人で仕事をする機会が増えた」
「職場での助け合いが少なくなった」
「職場でのコミュニケーションの機会が減った」
など、
従業員の孤立した状況を聞いた質問に対して、「そう思う」と回答したのは「心の病」が増加している組織が多いのに対して、
「従業員の声が事業開発や業務運営に反映されている」
「異なる雇用形態の人とのコミュニケーションはスムーズである」
など垣根を越えたコミュニケーションについて肯定的な回答をしたのは「心の病」が減少している組織が多い結果となっています。
(※日本生産性本部「メンタル・ヘルス研究所」/2014年)
「従業員の孤立した状態が精神疾患を引き起こす大きな要因」であることは間違いありません。
「職場のコミュニケーションや情報共有がいかに密にできるか?」が、メンタルヘルスケアにおいても大切になってきますね。
心の病気も予防に重点を置く時代
本来メンタルヘルス対策の根幹は「不調者を出さないようにする」ことが前提です。
何よりも「まず顕在化している不調者のケアの優先」をすべきですが・・・
「潜在的に不調を抱えている人に対する対策」も重要となってきます。
最近では「メンタルヘルスの基本的な知識を提供」したり「管理監督者に対してリスクマネジメントの研修」を行ったりするなどの教育活動を行うケースも増えてきています。
また「ワークライフバランスの概念を普及」させ、「休日労働や有給休暇の取得」を促したり、「個人の働き方の多様性を認めたりしていこう」とする動きも活発化してきました。
メンタルヘルス対策には3段階の予防策がある
【一次予防】
一言で言えば「ストレスを発生させない職場を作る」取り組みです。
【二次予防】
重度な精神疾病を引き起こさぬよう「早期段階で不調を把握・発見し対処する」ための取り組みです。
(メンタル不調者本人・上司・同僚への気づきの支援や、ストレスチェック、検診、相談窓口など)
【三次予防】
実際にメンタル不調を発症してしまった社員の治療と休職後の職場復帰・再発予防段階での取り組みです。
貴方は、この中でどれが一番重要だと思いますか?
メンタルヘルスケアと聞くと、たいていは二次予防の内容を思い浮かべる方が多いでしょうが「本当に大切なのは実は一次予防」なのです。
二次・三次予防はあくまで対症療法です。
一次予防で「ストレス要因を根幹から絶っていくこと」が、中長期的なメンタル不調の予防において重要と言われています。
【最後に】理学療法士・作業療法士こそメンタルヘルスについて再考を
職場の労働環境の改善だけでなく、「社員自身にメンタルヘルスケアの基礎知識を伝え、自身のストレス管理方法を学ばせる」ことはメンタル不調の未然防止や健康増進に繋がります。
今後はいかに「心の不調を治すことが出来るか?」だけではなく、「心の健康を維持することができるか?」がより重要であり現代の働く日本人の課題とも言えるでしょう。
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